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中小企業退職金共済(中退共)について

中退共制度とは、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。

 
Q.従業員が欠勤や休職などをする場合、掛金は納付し続けなければならないのですか?
A.「掛金未納正当理由申立書」の提出を行なえば、掛金を未納とすることが可能です。
従業員の方が欠勤・休職される場合は「掛金未納正当理由申立書」を中退共本部収納課に郵送またはFAXしてください。
一度の申立書提出で、最長12か月まで掛金を未納とすることが可能となり、退職金共済契約解除の対象とする掛金未納月から除外することが出来ます。(正当な理由なく12か月未納すると契約解除となります。)
また、すでに掛金が引き落とされた月分の欠勤・休職期間についても、申立書を提出する月を1月目として5月前まで遡ることが可能です。(遡った期間の掛金は返還されます。)
ただし、掛金を未納とする正当な理由は、次の場合に限られます。
・被共済者がその月の所定労働日の2分の1を超えて欠勤または休職したとき。
・事業主の責めに帰すことができない事情(経営不振・資金難等は該当しません)で掛金を納付することができなかったとき。
 
 
Q.扶養の範囲内で働いているけれど、退職金を受け取ることにより扶養範囲を超えてしまう?
A.退職金支給が中退共からのみであれば、扶養範囲は超えません。
控除対象配偶者となる人の範囲に「年間の合計所得金額が38万円未満以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」という条件があります。
この「年間の合計所得金額」には退職所得金額も含まれておりますので、中退共から支給される退職金も含まれるということになります。
では、どのくらい所得が増えるのか計算してみましょう。

例:掛金月額10,000円、納付年数21年(252か月)

中退共 基本退職金額表:http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/sisan/sisan03.html

基本退職金額表を見てみると、支給金額は2,814,600円となっています。
この支給金額から退職所得控除を行い、課税退職所得金額(年間の合計所得に加算される金額)を算出します。

●退職所得控除
勤続年数退職所得控除額
 ア 勤続年数が2年以下の場合 80万円
 イ 勤続年数が20年以下の場合 40万円×勤続年数
 ウ 勤続年数が20年を超える場合 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※退職所得控除額は、通常退職者の勤続年数に応じ求めますが、中退共制度の場合の勤続年数は、退職金額の計算の基礎となった期間(掛金が納付された期間)となります。
 

例の場合ですと、納付年数が21年ですので、ウの式に当てはめて計算します。
800万円+70万円×(納付年数21年-20年)=870万円

この870万円が支給された退職金から控除され、残った金額の1/2が課税退職所得金額となります。
2,814,600円(支給された退職金)-8,700,000円(退職所得控除額)=0円(課税退職所得金額)

退職所得控除額の方が支給された退職金よりも高いため、課税される退職所得は0円となりました。
また、現在設定されている月額掛金×納付月数で課税退職所得金額を計算してみましたが、退職所得控除額を超える支給額はありませんでした。
つまり、中退共から支給される退職金は、年間の所得合計に影響しないということですね。
※中退共以外からも退職金を受け取る場合を除きます。
 
 
Q.退職後、退職金の受け取りはすぐにしなければならない?
A.退職した日から5年間であれば、いつでも請求可能です。
退職金を請求できる期間は、従業員が退職した日から5年間となっています。
ただし、5年を過ぎても支給停止になったり、減額されるということはありません。(請求しなかった理由を報告するなど手続きが煩雑になります。)
また、退職金を中退共へ請求する際の請求書に「退職所得申告書欄」がありますので、そちらを記入・押印いただきますと、中退共から支給される退職金に関して確定申告も不要とすることが出来ます。
 
 
Q.従業員が退職したが、中退共へ退職したことの届けの提出を忘れており、掛金も納付し続けてしまっていた。掛金は戻ってこない?
A.従業員が退職した日に遡って被共済者退職届を提出、納めすぎた掛金は全額返還されます。
本来、退職する日までに行う手続きを忘れてしまっていた場合でも、実際に従業員が退職した日に遡って中退共に被共済者退職届の提出を行ってください。また、納め過ぎた掛金も全額返還されます。
現在加入している被共済者をご確認したい場合は、毎年中退共より事業主宛に届く「掛金納付状況票 及び 退職金試算票」にてご確認いただくか、中退共へお問い合わせください。